この連載は、アンサンブル愛好家である筆者が、アンサンブルコンテスト(アンコン)におすすめの曲を紹介していく連載です。
近年の全国大会では金管アンサンブルの中でも八重奏の演奏が多く見られるため、今回は金管八重奏におけるアンコン向けのおすすめ楽曲をまとめてご紹介します。
「目指せ金賞」の名の通り、王道から挑戦的な楽曲まで、人気の金管アンサンブル作品にフォーカスしました。難易度や演奏のポイントもあわせて記載していますので、ぜひ選曲の参考にしてみてください!
3つの情景(初~中級者向け)

楽曲情報
- 作曲者:坂井貴祐(Takamasa Sakai)
- 演奏時間:4分30秒(約)
- 編成:金管八重奏(Tp×3、Hr×1、Tb×2、Eup×1、Tuba×1)
曲について
この曲は2010年に北アルプス吹奏楽団からの委嘱により金管五重奏曲として作曲されたものを、金管八重奏版へ拡大した曲です。
タイトルのとおり、雰囲気の異なる3つの楽章から成る組曲ですが、それぞれ独立した曲想を持ちながらも、第1曲で現れるリズムの音型とファンファーレ風のモチーフが3曲を通して繰り返し登場し、全体の統一感を生んでいます。
演奏時には曲間をあまり空けすぎず、「3曲ひとまとまり」の流れを感じさせる表現がカギとなります。
グレードは4ですが、複雑な記譜は少なく素直でわかりやすい構成のため、中学生~高校生の金管アンサンブルでも挑戦可能です。
ただしTp1st には High B♭ が登場し、また全パートでテンポ早めのタンギングが登場するため日頃の基礎練習が欠かせません。
技術的に大きな壁はない一方で、アンサンブルの精度や場面ごとのメリハリを明確に示すことが曲の完成度を左右します。
楽器の持ち替えもないのでどんな団体でも取り組みやすいところもポイントです。もちろん全国大会での演奏歴もあります!
人数の都合で八重奏が難しい場合は五重奏で挑戦してみてください!

晴れた日は恋人と市場へ!(中~上級者向け)

楽曲情報
- 作曲者:建部知弘(Tomohiro Tatebe)
- 演奏時間:5分00秒(約)
- 編成:金管八重奏(Tp×3、Hr×1、Tb×2、Eup×1、Tuba×1)※TpはPic.TpとFlugの持ち替えあり
曲について
この曲は、玉川学園中学部吹奏楽部の委嘱により、アンサンブル・コンテスト用に作曲された作品で、全国大会での演奏歴もある定番曲です。
「コンテスト曲らしくせず、演奏会のレパートリーにもなる明るく楽しい作品を」という要望のもとに仕上げられており、演奏会でも取り上げられることが多く、奏者も聴衆も楽しめる作品となっています。
曲の内容は題名の通り、晴れた日に恋人と出かける主人公の素直な心の動きを場面ごとに描いたものです。各楽器のパートはその場面の気持ちをシンプルに表すように書かれており、奏者が自分の役割を意識して演奏することで曲の流れがより鮮明になります。
技術的には極端に難しい部分は少なく、アンサンブルの基礎力を試される構成です。前半の緩やかな部分ではハーモニーの緻密な作り方が、後半の速い部分では縦の動きの正確さがポイントになります。また、トランペット1stがピッコロトランペット、2ndがフリューゲルホルン、3rdがフィンガーシンバルとトライアングルに持ち替えるなど、編成に工夫があるため、こうした持ち替え楽器を用意できるチームには特に挑戦していただきたい曲です。
コンテストでも演奏会でも映えるレパートリーですが、特にコンテストにおいては緩急の対比を活かすことで、作品全体の完成度をより高めることができるでしょう。
楽市楽座-さくらの抄(中~上級者向け)

楽曲情報
- 作曲者:田村修平(Shuhei Tamura)
- 演奏時間:4分40秒(約)
- 編成:金管八重奏(Tp×3、Hr×1、Tb×2、Eup×1、Tuba×1)
曲について
この作品は2014年、玉川学園中学部の委嘱により作曲された、全国大会での演奏歴もある、金管八重奏の人気レパートリーです。
多少テンポの変更はありますが大きく見ると急-緩-急の三部形式で書かれており、和風で勢いのある冒頭と終結部に対して、中間部には抒情的で情感豊かな旋律が置かれ、曲全体にメリハリを与えています。随所に現れる変拍子は演奏上の大きな特徴であり、リズムの揺れを正確にそろえること、テンポの推進力を保つことが仕上がりのポイントです。
ソロ部分も多く、ソロはもちろんですがソロに入る前の「間」も意識したいです。急部分では掛け合いな音形が出てくるためニュアンスや吹き方を全員で統一し、自然なフレーズの受け渡しを行えるとすっきり聴こえてくると思います。
聴いた感じ以上に難易度の高い曲ですが、冒頭から終盤まで非常に聴き映えしますので、中級者以上の団体にはぜひ挑戦いただきたいです。
おわりに
今回は金管八重奏のアンコンおすすめ曲をご紹介しました。
金管ならではの重厚で華やかな響きや、迫力あるアンサンブルは、コンテストでも大きな強みになります。
バラエティ豊かな編成や表現の幅広さを活かすことで、同じ八重奏でもチームごとに個性豊かな演奏が生まれるのも金管アンサンブルの魅力です。
ぜひ、皆さんのチームに合った一曲を選んで、金管八重奏ならではの魅力をアンサンブルコンテストで発揮していただければと思います。
今回の記事が選曲のヒントになれば幸いです。
次回はまた別の編成にスポットを当ててご紹介する予定ですので、どうぞご期待ください!